朝・・・バスで駅に着いたら、改札の周りに人だかり。騒然としていて、携帯を手にしゃべっている人が沢山・・・。あ。。。これは電車止まっているね。車両故障とのこと。
「振り替え輸送を行っています!」駅員さんが一生懸命説明しています。いつも思うんですけど、振り替え輸送・・と言っていただいても、料金的には振替になっているかもしれませんが、振り替える駅までの足がないとあまり振り替えていただいた気はしませんねえ。とはいえ駅員さんに罪はありませんし、誰のせいというわけでもないし仕方がありません。
タクシーは長蛇の列、いつもはたくさん停車しているように感じるバス停もなぜか空っぽ。仕方がないのでJRまで歩きました。(といっても芦屋は阪急、JR、阪神が徒歩圏内。阪急が一番山側にあるから下りだし。)JR経由での出勤でした。
あ・・これが初体験なのではありませんよ。この話はあくまでも「枕」。
さて、仕事を終えて帰って参りました。ホームに降り立ったとたんに「寒ーい!」なに、これ?寒すぎ。
バス停に急ぎましたが、ちょうど出たところで、次のバスまで時間がだいぶあります。季節外れの寒さに(たぶん)タクシー乗り場もまたまた長蛇の列。
バスやタクシー待っている間に帰れちゃうよ・・・と思い歩き始めました。小粒の雨が冷たい。なんだか侘しい気持ちになってきます。途中で前を通りかかったカソリック教会のマリア様の像を見て、信仰心もないのに十字をきってみるうちの。寒くて暗くてなんだか心細いんだもの。
芦屋川を下って、阪神の駅まで来ました。(自宅はもっと南)、バス停に行ってみるもやっぱりかなりの待ち時間。
タクシー乗り場を覗くと、一人タクシー待ちなのかそうでないのか、待合室には入らない微妙な位置に70代ぐらいの男性が立っています。
うちの(以下う):「タクシー待っておられるのですか?」
老紳士(以下士):「うむ」
では、とばかりに後ろに立ちました。しばらく沈黙。突然老紳士が話しかけてきます。
士:「寒いなあ」
う:「寒くなりましたね」
士:「風がきついわ」
う:「待合室に入ったら少しはましですよ」
士:「いや、もう(タクシー)来るやろ」
(タクシー一台到着)
う:「あ、来ましたよ。すぐでしたね。」
士:「あんた、どこまでや?」
う:「え?わたしですか?〇〇町です」
士:「一緒やがな。わし〇〇(ご近所の超高級マンション)やねん。一緒に乗っていき」
う:「え????? あの、いや、その、そーですかあ・・・」
まあ、なんていうかそう危険な香りもなかったですし、寒いし、いいかあ・・と。
(タクシーの中)
士:「仕事の帰りか」
う:「はい、そうです」
士:「ごくろうさんやな。わしなんかもう、昼間からほにゃらら(聞き取れず)の料亭でずっと飲んただけやもんな」
う:「え?そうなんですか?うらやましいですねえ」
士:「もう83(たしかそう言ったとおもう)やしな。時間持て余してんねん」
う:「え???そうなんですか?(こればっかり)、もっとお若く見えますよ(ちょっとリップサービス。でも本当に若々しかった)」
士:「若いときはな、ずっとマジックやっててな(マ、マジックですかあ!!うちのの細い目が2倍に。脳裏に流れる”オリーブの首飾り”(by ポール・モーリアオーケストラ)プロだったのか聞きたかったけど聞けなかった)。年いってからもずっとボランティアでマジックやってたんや。ちょっと前にさすがにしんどなって、やめさせてもろたけど。音楽もな。ハーモニカずっとやっててな。(おお!ハーモニカ!これは趣味ですか?)」
う:「そうなんですか。凄いですねえ。(もっと気のきいたこと言いたかったけど言えなかった)」
そうこうしているうちにタクシーは家の近くまできました。
う:「あ、わたしそこを右なので(士のマンションは左に曲がったところ)、角で降ります。」(う、財布をごそごそ)
士:「ああ、もうええから、ええから。そこで降り」
う:「ええ、そんな見ず知らずの方に申し訳ない」
士:「ええねん、ええねん」
う:「そうですかあ。(でた、定番表現)ありがとうございます。」
名前も聞かず名乗らずでお別れしてしまいました。
もう暗かったし、もともと人の顔を覚えるのがとても苦手なので、どこかでお会いしてもわからないかもしれません。
でも、今度ご近所で、この人かな・・という人を見かけたら、「マジックの方ですか?」って聞いてみようと思います。
タクシーもう一台待つ時間や、タクシー代得した、ということではなく(いえ、それもありがたかったのですが)なんだかちょっと胸がほかほかと温かくなる体験でした。そう酔っているようには見えませんでしたが、朝から飲んでいたという老紳士にとってもちょっといい出来事であったらいいな、って思いました。