RSS

日別アーカイブ: 2025/05/18

何かを作る、ということ

ものごごろがつくころから母はいつも何か作っている人でした。染織家になりたかった、ということはずっと後になって知りました。親子そろいのルパシカのような服を作ってくれたり、兄と私のために大きな鯉のぼり(手描きでした)を作ってくれたり、まだハロウィンなんてイベントが盛んになるずっと前の昭和40年代に「お化けかぼちゃ」というのをどこかで知って作ってくれて、まっくらな物置で灯してきゃあきゃあ言ったり。

これは母手製のルパシカ(のようなもの)を着た兄とわたし。二人ともかわいい!!!(自画自賛)

小学校3年生の初めまで父の転勤で札幌に住んでいたのですが、そのころから母はトウモロコシの皮を使った人形を作るようになりました。トウモロコシの皮を使った人形はヨーロッパでは古くからある民芸品です。すぐに破れてしまう乾燥した皮に和紙を張って布のように使うところ、草木染で染めるところ、更にそれを裂いて織る、などは母のオリジナルだと確信しています。(今、インターネットで検索すると沢山の方が同じようなものを作っておられますが、昔母が教室で教えたり、雑誌に掲載されたりして、誰かがそれを気に入って広まったのだろうなあ、と思います。裂いて織るなんて酔狂な(時間がかかる)ことしている人はネットでは探せませんでした)

その後関西に越してきてからずいぶん経って念願の手織機(小さめのグランドピアノぐらいの大きさです)を手に入れてからは裂き織りに熱中していました。読谷花織に凝っていたこともあるものの、基本的にはとうもろこしの皮といい、裂き織りといい、まあ、廃材利用というか、まったくそこを意図していないのに「エコ」な母でございます。「もったいない」が口癖でしたので一貫しております。

仲良くしてくださっている方が熱心に勧めてくださり、住んでいる団地の展示コーナーで今までの作品の展示をする!と決めたのはもう2年も前でしょうか。後期高齢者となり、大きな織機を操るのはもう難しくなりましたが、何か新しいものを・・・と母が選んだのは「芋版」。そういえば子供の頃は毎年年賀状をゴム版や芋版で作ったものです。兄も私もそれぞれ作るのですが、母と兄の作品を見るにつけ、美術的センスのない自分が嫌になったものです。日本の唱歌などを題材にして、実家に行くたびに「これ見て!」「これどっちがいいかなあ」など熱中している母はいつも生き生きとしています。

そして、この4月29日から15日という日程で、無事に展示を行うことができました。当日までにキャプションづくりや案内ハガキの作成など、わたくし、アート事務所の社長兼下僕となり頑張らせていただきました。昔の手作り仲間のかたを始め、お世話になっている沢山の方にお越しいただき、本当に感謝しております。

本当につくづく思うのです。歌う、踊る、実際に手を動かして何かを作る、描く、書く、趣味だろうと仕事だろうと、なんでもよいのですが、そういうものがある、自分が「これをしているときが楽しい」と思えることに出会えるということは本当に幸せなことだと。AIが人間にとってかわる、というようなことが言われていて、もちろんいろいろな技術が向上して暮らしが便利になるのは素晴らしいことなのですが、「自ら何かする」楽しみがなくなったら人生全然面白くない・・・。もっと願わくばそのように「実際に手を動かす仕事が報われる世の中になったらよいな、と思っております。

15日まで、という日程を公表しておりますが、実は撤収は25日(日)の予定ですので、お近くの方は母の60年にも及ぶ手仕事との関わりの一部を見てやってください。

 
コメントする

投稿者: : 2025/05/18 投稿先 あれやこれや